新潟遠征物語:第2話「試合前に虹を見つけたら」(アルビレックス新潟vs東京ヴェルディ)

第1話のあらすじ

猫実(ねこざね)は東京郊外の企業で働く、ごく普通の社会人。

うん、ごく普通の...

ある日、楽しみにしていたアウェイ遠征が、まさかの平日開催に変更?

しかも翌日は絶対に休めない会議。新幹線もバスも間に合わない。

――でも、行かないなんて選択肢、私にはない。

同僚の呆れた視線を背に、往復700kmの日帰り弾丸遠征へ向かうのだった。

第2話「試合前に虹を見つけたら」(アルビレックス新潟vs東京ヴェルディ)

会社のデスクに置いてある小さな卓上カレンダー

そこに書かれた10月23日「PM休→新潟遠征!」の文字を、何度指でなぞっただろう。

「猫実さん本当に行くんだ、日帰りで」

「うん、まぁね」

昨日の帰り際に、同期の福田にそう言われたのを思い出してふっと笑みがこぼれた。

福田は某大阪のクラブを応援していて、この会社で唯一Jリーグの話で盛り上がれる相手であり、日々サッカー観戦に明け暮れる私の理解者でもある。

遠征が近づくにつれてワクワクする一方で、不安な気持ちも少しずつ大きくなってくる。特に今回のように、一人で長距離ドライブに挑むときはなおさらだ。

クラブの成績も気になって、遠征前はいつも胸がそわそわしてしまう。

時刻は12時15分、有給休暇が承認された私を誰も止めることはできない。

エンジンをかけ、カーナビの目的地を設定し、アウェイ遠征という名の冒険がいま始まる。


最寄りのインターから高速に入ると圏央道→関越道→北陸道と進み目的を目指す。平日の昼間なだけあって、道はそれこど混んではいない。

と言いたいところだけど、圏央道って物流の大型車がたくさん走っていて緊張する場面も多い。トラックとトラックに挟まれながら私はグッとハンドルを押さえた。


前橋を過ぎたあたりから、景色は一変する。

さっきまでの灰色のビル群は姿を消し、車窓には雄大な山々が流れ始めた。アップダウンの続く道。アクセルを踏み込む足にも自然と力が入る。

空はどんよりとした曇り空。時折、フロントガラスを雨粒が叩く。

「うーん、天気はいまいちかぁ…」

そういえば今日は全国的に雨の予報だったことを思い出した。

独り言を呟きながら、私は前方に巨大な口を開ける関越トンネルの入り口を見据えた。

全長約11km。日本で二番目に長いこのトンネルは、まるで異世界への入り口みたいだ。

オレンジ色の照明がどこまでも続く、単調な景色。ひたすら続く暗闇の中、私は今日の試合のことを考えたりしていた。

長い、長いトンネルの終わりを示す光が、前方に見えてくると、眩しさに少し目を細める。

トンネルを抜けた、その瞬間。

「――えっ、うそ…!」

また、声が漏れた。

さっきまでの雨と曇天が嘘みたいに、目の前には突き抜けるような青空が広がっていた。

そして。

その青空をキャンバスに、巨大な、本当に巨大な虹がくっきりと架かっていた。

湯沢の山々をまたぐように、七色のアーチが鮮やかに輝いている。運転中じゃなかったら、間違いなく写真撮ってただろう。

トンネルを抜ける前と後で、まるで世界が反転したかのような光景に高速道路を走る他の車も、心なしかスピードが落ちているように感じた。

さっきまでの運転の疲れなんて、一瞬でどこかに吹き飛んでしまった。心臓がドキドキと高鳴るのがわかる。

虹を見るとどうしてこんなに幸福な気持ちになるのだろうか。

これは、きっと良いことがある。いや、絶対に良いことがあるに違いない。


車を走らせること30分。

湯沢を抜け、大和パーキングエリアに差し掛かった頃、信じられないことが起きた。

「また、虹だ…」

さっきの虹とは別の、でも同じくらい鮮やかな虹が、また空に架かっている。

今度はちょうどパーキングエリアがあったから、車を停めて、急いでスマホを取り出した。

カシャッ、と軽いシャッター音が、私の興奮を記録する。

写真に収めた虹を見ながら、私はニヤリと口角を上げた。

それは試合前に虹を見るというのは私にとってとても縁起のいいことだったからだ。

「よし。虹を2回見たから、今日は2-0で勝つな」

そういえば、と思い出す。夏のダービーマッチの日も、試合前に虹を見た。あの試合は引き分けだったけど、負けなかった。

私の「不敗神話」は、まだ続いている。

今日、この2つの虹がもたらしてくれるのは、引き分けなんかじゃない。きっと、最高の勝利に違いない。


そんな確信を胸に、再びアクセルを踏む。

長岡ジャンクションから北陸道へ。ナビの表示を見ると、新潟駅まではまだ1時間近くかかるらしい。

「新潟、大きいなぁ…」

地図で見ているのと、実際に走るのとでは大違いだ。東京から約3時間走り続けて、まだ目的地に着かない。

なんだか途方もない場所に一人で来たような、でも、だからこそ燃えるような気持ちが湧き上がってくるというものだろう。

やがてスタジアム最寄りの「新潟中央IC」が見えてきた。ここまでくればスタジアムまでのこり5分程なのだが…

私はスタジアムとは反対方向の新潟駅方面へと車を進めている。

なぜかというと今回の旅の目的は1つだけではないからだ。

最寄りのコインパーキングに車を停めてエンジンを切る。シン…と静まり返った車内で、私は大きく息を吸い込んだ。

時刻は15時50分。キックオフまで残り3時間10分。

「よし、いきますか!」

次回予告

新潟までたどり着いた猫実

試合前に立ち寄った新潟でどうしても”やっておきたかったこと”とは何なのか?

スタジアムに向かおうとした途端、再び激しい雨が降り始めた。

次回「新潟まで行ってすることなのか?」

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