新潟遠征物語:第1話「アウェイ遠征はもう始まっている」(アルビレックス新潟vs東京ヴェルディ)

第1話「アウェイ遠征はもう始まっている」

「え、猫実(ねこざね)さん、午後休なんですか?いいなー」

デスクに置かれた観葉植物の葉をなんとなく指でなぞっていると、同僚の新井が声をかけてきた。

時計の針は、もうすぐ午前12時を指そうとしている。何となく目をそらしながら、私は悪戯っぽく笑ってみせた。

「うん。ちょっと、今から新潟に行こうかなって……」

「……え?」

新井の顔が、鳩が豆鉄砲を食らったみたいに固まる。無理もない。

「に、新潟ですか!?明日も普通に出社ですよね!?っていうか、今からどうやって……」

「車で、日帰りで……」

自分でも分かってる。どう考えても、おかしい。本当なら、秋の気持ちいい3連休を使って、のんびり一泊二日の旅になるはずだったんだから。

おいしいご飯を食べて、日本酒を楽しんで、美しい棚田の景色を写真に収めて……

そんな穏やかな計画が、どうしてこんな無謀な弾丸ツアーに変わってしまったんだろうか。


“歯車が狂い始めたのは、今から数週間前のことだった。”

私が愛するクラブ、東京ヴェルディのサポーター界隈が、ひとつの知らせに揺れた。

今シーズンから形式がガラリと変わった『ルヴァンカップ』

その結果が私の運命を大きく左右することになったのだ。

ことの発端は、プライムラウンド(決勝トーナメント)の準決勝、アルビレックス新潟対川崎フロンターレの一戦だ。

もし、川崎が勝って決勝に進めば、私が待ち望んでいたアウェイ新潟戦は、予定通り11月3日に行われる。

新潟が勝って決勝に進んだら、その決勝戦が11月2日に行われるため、新潟戦は、平日の10月23日(水)に前倒しで開催されることになる。

東京ヴェルディ公式Xより引用(https://x.com/TokyoVerdySTAFF/status/1839145371873751378

さらにヴェルディ公式より『東京ヴェルディファン感謝祭2024』開催決定および開催候補日のお知らせ」がアナウンスされた。

『東京ヴェルディファン感謝祭2024』開催決定および開催候補日のお知らせ | 東京ヴェルディ / Tokyo Verdy
2024シーズンのファン感謝イベント『東京ヴェルディファン感謝祭2024』の開催が決定しましたので、お知らせします。開催候補日は、10月20日(日)または11月3日(日)を予定しています。※開催日は、10月9日(水)および10月13日(日)に行われるJリーグYBCルヴァンカップ プライムラウンド 準決勝(新潟vs川崎F...

突如として現れたこの知らせにより、ヴェルディサポーターが二分され盛り上がるなんて思いもしなかった。

ファン感謝際を10月19日にやってほしい『川崎派』と11月3日にやってほしい『新潟派』に分かれたのである。

私は11月3日に試合をしてほしい川崎派だったので、スマホを握りしめ、「頼む、川崎、勝ってくれ……!」と祈るように試合の速報を見守ったのだが。

無情にも運命の女神が微笑んだのは、『新潟派』に対してだった。

こうして、11月3日の新潟アウェイ遠征は、儚くも消え去り、10月23日(水)という、あまりにも無慈悲な平日開催へと変更されてしまったのだ。

「おのれ〇マザキビスケット……!」

心の中で少し怒りをあらわにしたが、ヤマザキビスケット様には日ごろからお世話になっているのであまり悪いことは言えない。

近所のドラックストアでルヴァン(その他いろいろ)をリピートしており、会社でのおやつといえばルヴァンなのである。

今も机の中にいくつかストックされている。


でも、よくよく考えてみれば、サッカー観戦は常に日程との戦いだ。

リーグの開幕日程が発表されるのは、たいてい開幕の1ヶ月ちょっと前。そこから慌てて飛行機や宿を押さえる。

ACLや天皇杯の結果次第で、週末の予定が変更になることなんてよくあること。予測不能な台風やゲリラ豪雨で、試合が延期になることだってある。

その度に、頭を抱えスケジュール帳とにらめっこし、交通手段と宿泊先を光の速さでキャンセル&再予約する。

理不尽だ、と思うこともある。でも、心のどこかで、このスリルを楽しんでいる自分もいる。

「普通」じゃないから、面白い。予測不能な事態に、どう臨機応変に対応して、どうやってスタジアムにたどり着くか。

それはまるで、クリア条件が毎回変わるゲームみたいで。そうやって苦労して辿り着いたスタジアムでのクラブの勝利は格別なのだ。

そう、だから今回も、行く。

翌日の午前中にどうしても外せない会議が入っている。宿泊なんて、選択肢にすら入らない。まさに「無理ゲー」。

終電の新幹線だと試合終了まで見られないし、深夜バスは翌日の仕事に響く。残された選択肢は、ただ一つ。

――日帰り弾丸、車での往復700kmドライブ

正午を知らせる会社のチャイムが、まるでキックオフを告げるホイッスルのように高らかに鳴り響いた。

言葉を失った新井にひらひらと手を振り、私は逃げるようにオフィスを後にした。

ビルの自動ドアを抜けると、ひんやりとした10月の空気が火照った頬を撫でていく。

これから、果てしなく長いようで、きっとあっという間に終わる旅が始まる。なんとも言い難い、矛盾した、でも最高にエキサイティングな旅に。

目的は、たった一つ。私たちのクラブに、勝利を届けるため。

新潟の夜に、緑の歓喜を響かせるために。

次回予告

オフィスを飛び出した猫実を待ち受けるのは、片道350kmの孤独なドライブ。

関越トンネルを抜けた先に広がるある光景とは?

果たして無事、新潟までたどり着くことができくのだろうか。

新潟遠征物語:第2話「試合前に〇を見つけたら」

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